タスク管理のピラミッド(タスク管理4.0)

タスク管理4.0を習得すべき3つの理由 ~3.誰でも習得効率が一定~

タスク管理4.0を習得すべき最後の理由は「タスク管理は誰でも習得効率が一定」ということだ。

これは以前にも書いた話だが、今回はなぜ習得効率が一定なのかを能力と比較しながら詳しく見ていく。

まず新しい技能を習得する過程をモデル化する。習得すべきことをインプットし、自分というプロセスを通し、アウトプットされるの量・質で、習得すべきことをどれほど習得したかが決まるモデルだ。

能力の場合、天才的才能がない限り、インプットよりもアウトプットの量・質は下がる。

例として、プレゼン力を上げる過程を考えてみる。

Aさんはプレゼン力の一つとして、「言葉が詰まったときに、「あー」「えー」と言わない」技能を習得したい。

まず最初は、どんなときも「言葉が詰まったときに、「あー」「えー」と言わない」ということを自分にインプットする。どんなときも「言葉が詰まったときに、「あー」「えー」と言わない」という完全な状態を数値の10とする。

しかし実際に練習したプレゼンの録音を聞いてみると、気をつけていたつもりでも、完全に「あー」「えー」をなくすことはできず、まだ以前の半分程度は言ってしまっていた。つまりアウトプットは5になった。

このような経験は誰もが持っているのではないか?

知識として完全な状態の10をインプットしても、出てくるアウトプットは10以下になるのだ。

例を続ける。

Aさんがプレゼンの練習をしているのを見て、前々からプレゼン力が自身の課題だと感じていたBさんも同じ練習をすることにした。

そしてBさんが同じ練習をしてみると、以前の3割程度しか「あー」「えー」を抑えることができなかった。

このような状況は十分にありえる。

同じ能力を習得しようとしても、人によってアウトプットが変わってくるのだ。

そして、能力習得とは「インプットした10という完全な状態に近づくまで練習を続けること」であるので、例に挙げた二人は練習を繰り返すことになる。

一方、タスク管理は10のインプットをしたら10に近いアウトプットを出せる。

そしてその習得効率に人による差は生じない。

さらに最初から10に近いアウトプットが出せるので、練習を繰り返す必要もない。

なぜこの違いが生まれるのか?

それは、能力が属人的であるのに対し、タスク管理は属物的だからだ。

能力習得は人というプロセスを通る。インプットは、人それぞれ異なる資質、経験、環境を通してアウトプットに変換される。だからその抵抗によりアウトプットは減り、人によってアウトプットも変わる。

しかしタスク管理習得は、実際は人が練習によって何かを覚えるのではなく、物や仕組みの使い方を変える行為なのだ。

スマホにアプリをインストールするのと同じだ。

人はその物や仕組みをただ使うだけなので、人それぞれ異なる属性によってアウトプットが変わることはない。

タスク管理は能力ではなく、物や仕組みを扱うための技術なのだ。

例えば、タスク実行管理の技術の一つに「25分作業して、5分休む」というポモドーロテクニックというものがある。

これはタイマーという物をどう使うかという話であって、人が練習して身に付ける類いの話ではない。

「チェックリスト」もタスク管理でよく出てくるが、「チェックリスト」は物である。

タスク状態管理でタスクを分解する際は、それに適した「チェックリスト」を見ながら作業を進めれば必ずタスクは分解できる。

朝のジョギングが習慣化できないという悩みに対して、タスク実行管理では「ジョギング用の服装をジョギングの前に行うタスクを実行する場所に置いておく」という解決案を提示できるが、これも服という物をある場所に置くという話であり、訓練云々の話ではない。

そして「服という物をある場所に置く」というタスクの実現可能性を高めるために、タスク実行管理では「『ジョギング用の服を用意する』というリマインダーをジョギングの前日にセットする」という解決案も同時に提示できるが、これも仕組みの使い方を変える行為である。

属人的要素をできるだけ排除するのがタスク管理だ。だから、誰でも習得率が一定になる。そしてタスク管理の習得とは、訓練で自分が覚えることではなく、物や仕組みの使い方を変えることなので、その習得効率はほぼ100%に近い。

ここで習得効率を100%と言い切らないのにはワケがある。

一つは全体的に見ればタスク管理は属物的なのだが、一部属人的な部分もある。例えばタスク実行管理やタスク発生管理で必要な考え方(マインドセット)だ。タスク管理で、考え方を定着させるタスクを作り、その実行を確実にすることはできるが、やはり考え方は頭の中の話なので、最終的には属人的な話になる。

もう一つは、物や仕組みの導入段階は習得効率が落ちるからだ。導入が済んでしまえば、あとはその使い方を変えるだけなので習得効率は100%になるが、最初の導入でつまずく人が多いのも事実だ。ここの習得効率を上げることがタスク管理習得のカギとなる。

最後に、脇に置いておいた「能力・情報・ツール」の内の情報とツールについて考えてみる。

ツールは、明らかにタスク管理と同じ「技術」なので、習得効率における特性も同じだろう。

情報は取り扱いが難しい。公開されている情報の中から情報を取捨選択するのであれば「技術」だが、非公開の情報を人のツテをたどって入手するのであれば、それは「技術」とは呼べず「能力」に近い話だろう。


今回でタスク管理4.0を習得すべき理由の説明は終わりである。

タスク管理だけやっていればなんでもうまくいくというような話は、夢物語だ。結局は能力との掛け合わせとなる。(「本当にタスク管理しかやってないのにうまくいったんですよ!」という人がいたとしても、本連載の第二回で述べたとおり、それはタスク管理でボトルネックが解消されたことにより元々持っていた必要な能力が開花したという話だ。)

しかし万人が習得でき、その習得率はほぼ100%。さらにタスク管理を習得することにより、能力の習得効率も上がり、ボトルネックを解消でき、自分の能力をフルに発揮できる。

世の中は昔から変わらず、生産性に最も影響を与える能力習得に偏重しているが、能力習得に励む前に、タスク管理という土台固めをするのが堅実で効率的な選択ではないだろうか?