書籍紹介

“「今日もできなかった」から抜け出す 1日3分!最強時間術 先送り0”は、令和時代のタスク管理のバイブルだ

「jMatsuzaki氏(と佐々木正悟氏)の新刊が出るって?!」 10年前、同氏の「人生の舵は自分で切れ!あたなの10年後は今週の33.6時間で決まる」をバイブルにタスクシュート時間術を突き詰めた記憶が蘇った私は、タスクシュート普及活動を応援する意味で本書「「今日もできなかった」から抜け出す 1日3分!最強時間術 先送り0」を予約購入した。 読了しての感想は「この本が今の時代のタスク管理のバイブルになるだろう」というものだ。 以下で、詳細を述べていく。

この貫禄を見よ!

手に取って最初に感じたのは「分厚い」ということ。
立つぞ!
分厚けりゃいいってもんじゃない。だけどこの分厚さと青さは、私が2009年に手にした「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」(全面改定される前)を彷彿とさせる。 「タスクシュートがマイナータスク管理術なのは、日本、いや世界の損失だろ」と考えていた私。「タスクシュート」というテーマで、これほど分厚く、内容の充実した本が世に出たことを大変うれしく思う。

クラシックとコンテンポラリーの融合

本書は、タスクシュート(時間術)の方法論に「1分でも手を付けたらやったことと見做す!だから先送りにはならない(なりにくい)!」というスパイスをまぶした内容になっている。 タスクシュート部分に関しては、タスクシュートに十数年携わっているjMatsuzaki氏と、タスクシュートが生まれたときから、その使い方や効用を研究されている佐々木正悟氏の御両名で書かれているのだから、私から話すことは何もない。古典にして王道な内容になっている。(逆算思考のタスク管理に慣れている人にはコペルニクス的転回になろうが、それは私も経験したことなので安心して、天と地が引っくり返る、不思議な感覚に浸ってほしい。それが「パラダイムシフト」の感覚だ。) ただそれでは何も書けなくなってしまうので、スパイスの部分について言及したい。 「全くやらない」のと「1分だけやる」のどちらが良いか? この問いの形式であれば、100人中100人が「1分だけやる」を選ぶだろう。 しかし実際に自分がタスク管理をしている場面になると、なぜか「1分しかやれないなら、やらなくていいか」という選択をしてしまうことがあるのが、タスク管理の不思議である。タスク管理には魔物が住んでいるのだ。 その対策としての「1分だけでもやったらヨシ!」という明快な指針は、100日チャレンジで、多くの人たちをサポートしてきたjMatsuzaki氏だからこそまぶせた、優しいスパイスなのである。 十年一昔と考えれば、20年昔のタスクシュートという古典的な手法と、「1分でも手を付けたら『先送り』とはしない」という現代的優しさが見事に融合した結果が本書と言えよう。

違和感こそが魅力

この本を読む人は、違和感を覚えるかもしれない。 ”時間は「ある」”から始まる、序章の前にある部分で「先送りは時間管理の問題ではない」などと、時間術の本らしからぬ論が展開されているからだ。 他にも、”思い込み”、”安らぎ”、”満足”など、普通の時間術の本には書かれていない単語がちりばめられている。本筋の内容とちぐはぐな印象を受ける。 私は、この”ちぐはぐさ”を高く評価したい。 なぜなら、タスク管理の真実がここにあるからだ。 冒頭の”時間は「ある」”の中にある「先送りは時間管理の問題ではない」という言葉が、タスク管理の真実をよく現している。 先送りゼロが本書のテーマだが、私からも別の先送りゼロの方法を提案しよう。 「今日やることを決めなければ、『先送り』は存在し得ない」 実際、このやり方で私も先送りゼロで、1日の成果マックスで毎日生きている。 「先送り」という認識を解体し、その背後にあるものを捉えることが、タスク管理の神髄だ。 ただそうなると、それはもはやタスク管理というメソッドではなく、もっと大きなカテゴリーになってしまう。 上記の私のドラスティックで普通の人が「?」となってしまうような突飛な方法ではなく、マスに受け入れられるメソッドを提示しつつ、その背後にあるものを少しだけ混ぜているが故に、ちぐはぐになるのだが、そのちぐはぐさは事実を含有している。 その事実とは、長らくタスク管理に携わっているjMatsuzaki氏と佐々木正悟氏が、そのような違和感を含んだ要素を、今現在タスク管理に取り込んでいるということだ。 この事実をどう受け取るかは、読者に依る。ただ、本書序章でjMatsuzaki氏が書かれているように「(既存の)タスク管理を突き詰めても、(既存の)タスク管理ではどうにもならない」という体験を経れば、自分のタスク管理をアウフヘーベンするジンテーゼとして、その違和感を含んだ要素を自然と取り入れることができるようになるのではないかと、私は考えている。 私も同種の体験をし、アウフヘーベンしたわけだが、この状態こそが「タスク管理を突き詰め、その限界を突きつけられても、それでもなお、タスク管理を信じる」者がたどり着く自然な状態ではないか、とさえ思う。つまりタスク管理の正常進化の形態ということだ。 今後、同じ体験にぶち当たる人たちがジンテーゼに至るきっかけとして、本書の違和感は非常に重要な役割を果たす。巷の自己啓発的かつ理路整然として違和感のない時間術本では、タスク管理を突き詰めた先の袋小路を突破するヒントを得ることはできないだろう。この違いが本書の決定的な特徴と考える。 今はただの違和感としか思えない人も、何年もタスク管理を突き詰めていった後に読み返したら、また違う印象を持つことになるだろう。この本はそんな息の長いバイブルとして、多くの人にメソッドとしてのタスク管理を広め、さらにその背後まで思考を巡らせる手助けをして欲しい。 これから本書でタスク管理を勉強する人は安心して欲しい。タスク管理は上記の違和感を取り込み、限界を突破する方法を確立しつつある。ちょっと前までタスク管理界隈では
1. 1日をフル活用することで無理なく長期にわたり高い生産性を保つ 同掲書 p76
なんて口が裂けても言えなかった。「調子が良い日もあれば、悪い日もある」というのが定説だったのだから。 タスク管理の未来は明るいぞ!