タスク管理のピラミッド(タスク管理4.0)

タスク管理に一度絶望した私が、なぜ再びタスク管理の虜になったのか

今後、タスク管理4.0の詳細を何回かに分けて説明していく。

その前に再度、わたしがタスク管理にかける今の思いをまとめる。

既得のタスク管理の敗北、精神の変調

わたしは2015年の初冬に、日本からスイスに赴任した。欧州子会社社長をサポートするための会社の人事異動によるものだった。

そして赴任して3ヶ月後には、精神を病んだ。

▼その際の記事


この時までは、会社に入社して5年間、仕事に揉まれながら培ってきたタスク管理の技術で、仕事をスムーズに回すことに自信を持っていた。

しかし、日本人社員の少ない海外での役割と仕事の量に押しつぶされ、その自信は粉々に砕け散った。

試行錯誤と仕事への慣れ

「今までのやり方が通用しないのであれば、新しいやり方を作り出すしかない」

そう思い、精神的不調とオーバーワークを抱えながら、様々な方法を試した。

以下から試した方法の一部だ。


今見返すと、お粗末な方法もちらほらあるが、王道的手段ではどうにもならないほど当時は追い詰められていたのだ。

その試行錯誤の結果と仕事への慣れのおかげで、2016年の夏頃には、相変わらずオーバーワークではあったが、どうにか精神的不調は落ち着いた。

「全然仕事はうまくいっていないけど、これから少しずつ改善していけるかな。。」

しかし残念ながら、この考えはすぐに打ち砕かれた。

更なる役割の追加→白旗→身体への影響

2017年始め、わたしはスイスからドイツへ異動になった。スイスにある部署の機能を丸ごとドイツに移転するためだった。

今までの役割と仕事はそのまま、部署移転立ち上げのプロジェクトを任された。スイスで3人いたスタッフは皆雇い止めになり、ドイツで新しく2人を雇った。

マンパワーが足りないので、私もその部署の仕事をすることになった。俗に言うプレイングマネージャーである。

さらに、自社が出展する最大規模の展示会に出品する製品手配のマネジメントも同時に任された。出展製品数は20点近く、マネジメントは多忙を極めた。

そこで私はアウトドアショップでキャンプ用具を買った。

そこから、月・水・金は会社に泊まり、火・木はシャワーを浴びるために家に帰るという生活を始めた。

スイスで働いていた時も、時々会社の駐車場に停めた車の中に泊まっていたが、コンスタントに会社泊をするのは初めてだった。

それでも仕事は終わらず、ミスが続いた。

タスク管理に関して上司から、「そんなことやっているから仕事が遅い」と言われて悩んだ。

そう言われても、わたしはタスク管理以外の仕事のやり方を知らないのだ。他にやりようがなかった。

感情が希薄になり、何を見ても何も感じなかった。

世界から色が消え、灰色になった。

「もう本当に無理です」

上司にそう伝えた。

上司はそれまでと同じように、「無理じゃなくてやるんだよ」と言った。しかし実際に仕事が回っていない状況を見て、わたしの仕事の一部を担当させるために人員を追加した。

役割が減ったため、毎日家に帰れるぐらいには業務量が減り、精神状態も良くなっていった。

同じ年の夏に受けた人間ドックで、脳の一部、海馬が萎縮していることが発覚した。

「まるで老人のような状態」だと医者は言った。海馬の萎縮はアルツハイマー型認知症の初期症状でもある。

海馬は運動不足やストレス、記憶力の低下で萎縮するようだ。信じたくはないが、頭の中ではなく頭の外のツールに記憶させるタスク管理を行っていたことが、海馬の萎縮に一役買っていたのかも知れない。

とにかく、このままだと若年性認知症になる危険性が出てきたので、人事部にこの事実を話し、無理して仕事をするのをやめた。

昇格→戦力外通告

そんな中、上司が異動することになり、それに合わせてわたしは管理職に昇格した。

そして、「あなたの今の働きぶりだと、ドイツには残れない」と上司に言われた。

守りから攻めへ。そしてその二つの融合

戦力外通告を受けて、今一度自分のタスク管理を見直した。

今までのタスク管理とは、自分の限界を見極め、タスクをその限界以下に抑えることにより、計画通りタスクを処理していく方法だった。

ふと、「そんなことやっているから仕事が遅い」と上司に言われたことを思い出した。

「今までやってきたタスク管理は、自分で自分の限界を作ることに繋がっていたのではないか?」

「それを外から見ていた上司は、『そんな簡単に、自分の限界を決めるな』と言いたかったのではないか?」

こんな考えが頭をよぎった。

タスクを自分の限界以下に抑える、言わば守りに入ったタスク管理は、特にタスクが多すぎる時には非常に有効だ。限界を超えたら自分は壊れてしまう。そして自分を守れるのは自分以外いないのだから、壊れる前に自分を守るべきである。

しかし一方で守りのタスク管理では、自分の限界を超えると判断したタスクは実行されない。

この判断というのがポイントである。

判断とは、タスクを実行する前に見切りをつけることだ。実際に実行してみたら限界以内に収まるタスクでも、事前情報から「限界を超える」と判断されたら、実行されない。

これはチャレンジの機会損失に繋がる。

管理職になると、組織の成長のためのチャレンジ、つまり攻めの姿勢は欠かせない。

これからは、攻めの要素を含んだタスク管理を取り入れ、守りと攻めのバランスを取っていくことが必要だと気付いた。

そして今現在、そのバランスを調整しながらタスク管理を相変わらず実践し続けている。

タスク管理は奥が深い。一度はその限界をこの目で見て、絶望した。しかし、アプローチを変えればまだまだタスク管理の先は見えない。

だから未だに私はタスク管理の虜なのだ。

タスク管理についての現時点の集大成

タスク管理の総論についての着想は去年からあった。

その着想が上記の去年から今年の出来事に揉まれて鍛えられたのが、今後紹介していくタスク管理4.0である。

とにかく「タスク管理」というものは、ややこしい。「タスク管理」という言葉の範囲は、人によって変わるからだ。

タスク管理4.0も、そんな人によって変わる「タスク管理」という言葉の一定義に過ぎない。

しかしタスク管理4.0は、何度かの挫折を乗り越えた私自身の経験から考え出された、実践的理論だと自負している。決して、机上の空論ではない。

タスク管理4.0が、「タスク管理って言葉は知っているけど、よくわかんないなー」という人の理解の助けになることを願う。